2015年11月21日土曜日

11月21日 臨床研究特別ワークショップ@倉敷中央病院(コクランライブラリーワークショップ)

臨床研究支援センター主催のワークショップ 「コクランライブラリーを使ってみませんか?」 無事に終了しました。

今回のワークショップではコクラン日本支部の大田先生をおよびし、コクランのシステマティックレビュー&メタアナリシスがどのように作られているのか追体験してもらいました。


●●という治療は効くのか?
といった臨床上の疑問に答えるためにシステマティックレビュー&メタアナリシスは作成されますが、その作成過程は大きく分けて

 ①集める(データベースの検索)

 ②質を吟味する

 ③統合する

の3つになります。

データベースの検索を実際にやっていただく時間がなかったのですが、②質の吟味ではVerheij et al 1994 [1] をスモールグループで読み、コクランの方法に準じて論文の吟味を行って頂きました。また③を追体験sるため、コクランレビューであるSmith et al 2014 [2] のFigure 4を作成してもらいました。まずはFigure 4に含まれる4つの論文からデータを抽出して、RevManを用いて図を作成しました。院内外から20数名の方に参加頂きありがとうございました。

*今回RevManを使用し作った図



[1] Verheij TJM et al. Effects of doxycycline in patients with acute cough and purulent sputum: a double blind placebo controlled trial. British Journal of General Practice. 1994:44:400-4
[2] Smith SM et al. Antibiotics for acute bronchitis. Cochrane Catabase Syst Rev. 2014:3:CD000245 

2015年10月21日水曜日

11月21日 臨床研究特別ワークショップ@倉敷中央病院(コクランライブラリーワークショップ)

1121日に臨床研究支援センター主催で、コクランライブラリーに関する臨床研究特別ワークショップを開催します。

患者さんに医療を行う際にはその医療行為を行った方がいいのか、もっといい方法はないのか悩みますが、コクランライブラリーは日常診療でよりよい判断を行うため、信頼のできるシステマティックレビューを作り、どの治療がどのくらい安全で有効な治療なのかの情報を医療者や患者さんに提供しています。


ただ一方でコクランライブラリーのサイトは英語です。「医療者として最先端しるなら英語ができなきゃいけない」というのももっともですが、やっぱり日本語に比べれば英語は読みにくい。
実はコクランライブラリーの提供するシステマティックレビューはページ数は多いですが、その内容はどこに何を書くか、論文の書き方・順番が決まっています。つまり、一度コクランライブラリーのレビューの作り方・仕組みをしっていればより簡単に論文が読めるわけです!

今回のワークショップではコクランライブラリーのシステマティックレビューがどのように作られているか学ぶため、日本コクラン支部の大田えりか先生をおよびしてコクランライブラリーに関するワークショップを開催します。

題材は「風邪(急性気管支炎)に抗生物質は意味があるの?」

風邪をひいた時に抗生物質使ったら劇的改善したよ! とか。
いやいや、抗生物質なんて使わないでしょ。 とか。
いろいろご意見あると思いますが、じゃあ実際のところ論文の中でどう評価されているのかコクランシステマティックレビューを読んでみます(一部作る手順もします)



当日は英語資料だと大変なので日本語資料を準備する予定です。「風邪に対して抗生物質効くの?」というのを知りつつ、しかもコクランライブラリーについても学べてしまう。こんなワークショップ参加どうでしょう。皆様の参加をお待ちしています。

日時:1121() 13時~19
場所:倉敷中央病院研修棟
対象:医療関係者(職種問わず興味のある方)
問い合わせ・申し込み:臨床研究支援センター kurari-net ★ kchnet.or.jp(★を@に変更してください)
*ワークショップ形式のため事前参加申し込みをお願いします。名前・所属を記載のうえ上記アドレスに送ってください。


2015年10月18日日曜日

第3回CASP関西ワークショップ

日常診療では過去の経験(論文)をもとに得られたエビデンスに基づいて診療を行います。最近では個々の論文をより信頼の高いものにするために、Reporting Guidelineなどを用いて何を論文に書くべきかがきめられています。

また、個々の論文をすべて臨床を行うわけにもいかないため、どういう診療をしたらよいか個々の論文をまとめられた診療ガイドラインがあります。個々の研究をReporting Guidelineで研究の仕方を均一化したのと同じように、診療ガイドライン自体もより信頼性を高くするために作り方をきめましょうということで最近ではGRADEシステムを用いて診療ガイドラインを作成するような流れになっています。

ところで、なんとなく診療ガイドラインは正しいもの、それに従って診療しないと訴訟問題になってしまうのではとか、学会が作成した診療ガイドラインだから、偉い先生方が作成したから正しいに違いない、と思ってないでしょうか。もしくは実際に診療に使用し難い診療ガイドラインに遭遇して苦しんだことないでしょうか。

今回の関西CASPワークショップでは、現在存在する診療ガイドラインがちゃんと妥当性をもって作成されているかAGREEⅡという評価システムを用いて評価する内容で開催されました。

AGREEⅡ 日本語版(使用版)

日本ではMinds医療情報サービス-でガイドラインが公開されていますが、このガイドラインはAGREEⅡで評価され一定以上のもののみ公開されているようです(それでも日本のガイドラインの質は低いようですが)

先日は日本蘇生協議会からJRC蘇生ガイドラインが公開されましたが、このガイドラインはGRADEシステムにのっとり、非常に質の高いガイドラインのようです(GRADEワーキンググループの相原先生によるJRCガイドラインの評価)。今後は信頼性の高いガイドラインが増えてくると思われますが、診療ガイドラインを全て盲目的に信じればよいわけではないこと、診療ガイドラインの評価にはAGREEⅡというものがあるのは知っておいてもよいのかなと思います。

2015年10月3日土曜日

コクランコロキウム

10月3日からウィーンで開催されたコクランコロキウム2015に参加してきました(学会HP)。コクランは(Cochrane)はランダム化比較試験を継続的にすべて集めたり、その集めたデータをもとにシステマティックレビューを行ったりすることで、医療者や患者、政策決定者等がより妥当性の高い判断を行うことを目的とする団体です。

About Cochrane(Cochrane Libraryのページより)

安全で有効な医療を提供することは大事ですし、そのためには信頼のおけるデータ(論文)が必要となってきます。コクランでは個々の医療がどのくらい安全なのか、有効なのかを評価するために、システマティックレビューを継続的に作成しています。今回のコクランコロキウムでも、どういう手法がシステマティックレビューが必要か、現状の手法は何が問題なのかといったワークショップがたくさん行われていました。

今回の学会で話題になったうち面白かったのは、コクランレビューの翻訳事業についてでした。

コクランライブラリーでは●●の疾患に対してどの治療が有効か? という疑問に答えるためにたくさんのシステマティックレビューを作成しています。実際、このシステマティックレビューは診療ガイドラインの根拠になっていたりと信頼性は比較的高いものです。よく論文によっては本を買わないと内容が読めないことが多いですが、コクランのシステマティックレビューをより多くの人にレビューを読んでもらうため、システマティックレビューが作成されてから1年たつとOpen Accessになります。
ただ、問題としては英語であること。実際、英語やスペイン語などの主要言語は世界の4割近くで使用されていますが、残り6割の人々は日本語をふくめたマイナー言語で生活しています。
よりよい医療を行う上で、それぞれの薬や治療がどのくらい効くかについて、医療者が知っておくことはもちろんですが、患者にも知ってもらうことが重要です。そのためにどのようにシステマティックレビューを翻訳するかというのが議論されていました。ちなみに日本ではMinds(マインズ)ガイドラインセンターが一部のシステマティックレビューを翻訳しています。

インターネットで病気のことを調べる患者さんは多いですし、テレビでは病気特集も時々くまれます。一方でネット、テレビで入手できる医療情報は玉石今後でどれが信頼できるか判断に悩むことがあります。コクランレビューがすべて信頼できるか?という疑問はあるものの、その多くは信頼できるものであり、今後の翻訳事業は面白そうだなと思って参加してました。


・・・翻訳事業とは別ですが、コクランコロキウムのプレナリーはYoutubeで公開されてます。
このyoutubeは従来の疫学と異なるビッグデータを用いた研究を、従来の疫学とどう結びつけ信頼できる医療情報とするかのプレナリーだったと思います。ほかにもプレナリー公開されてるのがあるので興味ある方は是非。


2015年8月29日土曜日

診断精度の系統的レビューワークショップ

8月29日は兵庫県立尼崎総合医療センターで行われた診断精度の系統的レビューワークショップに参加してきました。

ある身体所見や検査の感度・特異度をみつける診断研究(DTA: Diagnostic test accuracy)もたくさん発表されるようになり、個々の診断研究をまとめたメタアナリシスもずいぶん本数が増えました。今回のワークショップではこれまでに診断研究のメタアナリシスを実際におこなってきた方々を講師にワークショップが開催されました。


PubMed search: "sensitivity and specificity"[mesh] AND Filter:Meta-analysis で検索



診断研究のメタアナリシスは、RCTなどの介入研究のメタアナリシスと基本的には概年としては一緒で、「過去の論文を集めてくる」「論文の質を評価する」「統合する」というプロセスになります。

診断研究のメタアナリシスでは2014年にREQUIRE(臨床疫学研究における報告の質向上のための統計学の研究会)が研究会を開催しており、そのスライドが一部公開されています。

REQUIREのサイトでは入門書や論文のリストも掲載されていますので、実際に診断研究のメタアナリシスを行う上で参考になります。またCochraneのDTAグループもHandbookを公開してますので、そちらも参考になるかもしれません。

また当臨床研究支援センターのメンバーで現在診断研究のメタアナリシスを行っていて、その過程を一部Slideshareで公開しています(前任地の職場名がかいてますが)。(
現在投稿中なのでAccept&Publishされればいずれ完成版のスライドに置き換える予定です)



2015年8月21日金曜日

論文の批判的吟味、新規経口抗菌薬は小児肺炎を減らしたか?

次回、論文の批判的吟味の題材です。

 小児肺炎の外来治療における新規経口抗菌薬の影響
 尾内一信、砂川慶介
 The Japanese Journal of Antibiotics. 2014 : 67 : 157-166

ラジオNIKKEIに新規経口抗菌薬が発売されたことにより小児肺炎の入院がへったんじゃないかという放送がありました。この放送をきいて本当にそうなの?といくつかのネットワーク(ML, SNS等)で話題になってたので、下記の元論文をよんでみようと思います。

 ラジオNIKKEI 最近小児肺炎の入院が少ないのは、ワクチンの効果?(2015/6/24放送)

この研究から、「新規経口抗菌薬が小児肺炎を減らした」といえるのかどうか。
バイアスは十分配慮して研究が行われたのか。

いくつかのサイト等でこの論文に対してコメントしているものも。

 楽園はこちら側
 テビペネム・ピボキシル、トスフロキサシンが小児肺炎入院率をさげたのか


論文を読んで自分なりにこの論文のバイアスについて考えてから、上記ブログ読むとすごく参考になりそうです。




2015年8月19日水曜日

論文の批判的吟味&ブラッシュアップ(脳低温療法児の予後評価) Part2

先日は倉敷中央病院で行われた過去の研究でしたが、似たような研究があったのでそっちの紹介です。


前回の研究は低体温療法が行われた児の予後をみていましたが、今回の英語の論文は出生時にアシドーシスがあったけれども神経学的所見に問題なく低体温療法を行わなかった児の予後についてまとめた研究です。



倉敷中央病院シニアレジデントから報告された論文と比較すると、それほど異なった解析をしているわけではなさそうです。(専門家からみると研究を実際するときの難しさ、興味がすごくわくかどうかなどの違いは分かりませんが)
この論文で注目してみたいのは、対象者の記載です。

倉敷中央病院からの論文では対象者を「低体温療法を行った児」と解析を行った対象のみを記載していますが、DuPontらの論文では、「低体温療法を行わなかった児」だけでなく、出生した46887児のうち、最終的にどういうプロセスを最終的に解析した「低体温療法を行わなかった児」が選ばれたのか下記のような図で記載されています。

前回の勉強会で選択バイアスについて書きましたが、選択バイアスの影響をできる限り除くためには、その研究を行った際にどのようにして対象者が選ばれたのか記載することが対処のひとつです。DuPontらはそのために、わざわざ89人の解析をするために4万人の元データまでたどっているのがわかります。



2015年8月13日木曜日

論文の批判的吟味&ブラッシュアップ(脳低温療法児の予後評価)

今回は以前倉敷中央病院に在籍していたシニアレジデントの論文を使って論文を読むときのポイントや、実際に研究を行う時に注意したい点について少しワークしてみました。

 題材:当院で脳低温療法を必要とした重症新生児仮死の予後判定
    日本未熟児新生児学会雑誌 2012:24(1):121-126

脳低温療法を行った児をレトロスペクティブに集め解析し、1歳6ヶ月時点での発達(新版K式発達検査)が良いかどうかに影響する因子を模索した研究です。この研究では入院後7-8日目のNSE(Neurospecific enolase)の値が発達の程度に一番影響すると結論づけています。

いわゆるコホート研究ですので研究結果に影響しそうな内容を下の3つバイアスについて意識しながら呼んでいきました。

  • 選択バイアス
  • 情報バイアス
  • 交絡バイアス

にわけてみていきました(See slideshare)

この研究では脳低温療法を行った児を対象にし、死亡・転院した児を解析から省いて、生存退院した児を解析の対象としていました。そのため、退院した時点で「この児が1歳6ヶ月の時点で発達が順調にいくかどうか」については結果をもとに判断できますが、
入院7-8日目にNSEを測定した時点で「この児の1歳6ヶ月での発達が順調にいくかどうか」の予想には今回の解析は使用できない点は論文を読むときに意識した方がよさそうです。

研究のClinical Questionの設定の仕方によって対象患者はさまざまです。
脳低温療法の児を診ている時に、どんな情報がほしいのか。
最初の時点(入院1週間)で予後が知りたいのか。それとも退院する時に予後が知りたいのか。
その研究がどんな患者を対象にしているのか、どんな患者を対象から省いているのか意識しないと、その結果を読み解くことができない点にすごく意識させられる論文でした。










2015年7月11日土曜日

臨床研究計画書作成ワークショップ

聖ルカ・ライフサイエンス研究所主催の臨床研究計画書作成ワークショップを開催しました。実際に臨床研究にあたって必要な研究デザインの話や、生物統計の講義に加えて、スモールグループで自分たちの臨床疑問をもちよって、その疑問を臨床研究計画書まで落とし込む形のワークショップでした。

参加者からの感想で、グループで相談することで日常診療での疑問・アイデアが、短時間の中で具体的な臨床研究になっていくのがすごいという感想があったのが印象的でした。

定員20名をこえる方に参加頂き、スモールグループでも面白い研究計画が立案されていました。あとはこれらの研究がIRBにとおり、全部の案が論文になればすばらしいですね!


  □臨床研究計画書作成ワークショップ:中四国ブロック
  □日時: 2015年7月11日~12日
  □会場: 倉敷中央病院
  □対象: 卒後5年~15年の医師

 

2015年5月25日月曜日

GRADEシステムに関する本


5月23日に開催した“診療ガイドライン利用者のためのGRADE system”ワークショップですが、GRADE systemについて追加情報です。当日使用したスライドの公開資料(一部)です。




GRADEシステムについて解説している本はあまりないのですが、「学びなおしGRADE-GRADEアプローチ時代の臨床論文の読み方」は比較的とっつきやすい本だと思います。


GRADEシステムについてより詳しく書いてあるのは相原先生の本です。より深く学びたい、ガイドライン作成に携わる人や豊島先生の本を読んだあとより深く読みたい方におすすめです。(だいぶ難しいので、TOKYO EBMが開催するGRADEシステムのワークショップなどに参加する際に購入、もしくは参加してから購入がベターだと覆います。独学で読むには大変です。)



2015年5月23日土曜日

診療ガイドライン利用者のためのGRADE system

5月23日に臨床研究特別ワークショップとして “診療ガイドライン利用者のためのGRADEシステム” を開催しました。

日常診療において安全で有効な医療を行う上で、診療ガイドラインはひとつの手助けになります。一方で医療に関する情報・文献が膨大になっていく中で、どのような形で診療ガイドラインを作成すれば信頼できる診療ガイドラインが作成できるかが問題になっています。

GRADEシステム(Grading of Recommendations Assessment, Developement and Evaluation)はWHOやUpToDate、NICEやACP、コクラン共同計画など90以上の専門学会等で採用されている診療ガイドラインの作成方法で、日本の学会の診療ガイドラインもGRADEに今後順ずる団体が増えています。

GRADEシステムでは下記のように診療ガイドラインの作成を標準化しています。

  • 診療ガイドラインを作成する際、医療者だけでなく患者・家族や幅広い分野の方が参加して作成する。
  • 診療ガイドライン作成にあたり、推奨文(○○を推奨する・しない)を判断するガイドラインパネル班と、推奨文のための根拠を集めてくるシステマティックレビュー作成班に分ける。
  • 診療ガイドラインの推奨文は、“行うことを強く推奨する” “行うことを弱く推奨する” “行わないことを弱く推奨する” “行わないことを強く推奨する” の4つで記載する。

診療ガイドラインがどのように作られているのか知ることで、よりスムーズに診療ガイドラインを日常診療で活用できればとという趣旨で開催しましたが、引き続き今後も継続できればと思います。