2015年8月13日木曜日

論文の批判的吟味&ブラッシュアップ(脳低温療法児の予後評価)

今回は以前倉敷中央病院に在籍していたシニアレジデントの論文を使って論文を読むときのポイントや、実際に研究を行う時に注意したい点について少しワークしてみました。

 題材:当院で脳低温療法を必要とした重症新生児仮死の予後判定
    日本未熟児新生児学会雑誌 2012:24(1):121-126

脳低温療法を行った児をレトロスペクティブに集め解析し、1歳6ヶ月時点での発達(新版K式発達検査)が良いかどうかに影響する因子を模索した研究です。この研究では入院後7-8日目のNSE(Neurospecific enolase)の値が発達の程度に一番影響すると結論づけています。

いわゆるコホート研究ですので研究結果に影響しそうな内容を下の3つバイアスについて意識しながら呼んでいきました。

  • 選択バイアス
  • 情報バイアス
  • 交絡バイアス

にわけてみていきました(See slideshare)

この研究では脳低温療法を行った児を対象にし、死亡・転院した児を解析から省いて、生存退院した児を解析の対象としていました。そのため、退院した時点で「この児が1歳6ヶ月の時点で発達が順調にいくかどうか」については結果をもとに判断できますが、
入院7-8日目にNSEを測定した時点で「この児の1歳6ヶ月での発達が順調にいくかどうか」の予想には今回の解析は使用できない点は論文を読むときに意識した方がよさそうです。

研究のClinical Questionの設定の仕方によって対象患者はさまざまです。
脳低温療法の児を診ている時に、どんな情報がほしいのか。
最初の時点(入院1週間)で予後が知りたいのか。それとも退院する時に予後が知りたいのか。
その研究がどんな患者を対象にしているのか、どんな患者を対象から省いているのか意識しないと、その結果を読み解くことができない点にすごく意識させられる論文でした。










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