2016年10月29日土曜日

観察研究のReporting guideline STROBEの解説

数多くの臨床研究が過去に行われていますが、それらの質が問題になっています。例えば研究者は自分の自説に都合のよい結果だけを伝えようとするかもしれない。そこで、現在では臨床研究を行う時に、どのような項目を記載すべきかReporting guidelineを作成し規定しています。

研究デザインごとにReporting guidelineはあるのですが
(参考:The EQUATOR network) 今回はそのうち観察研究で用いられるSTROBEについて。

STROBEについては前回5月にIntroductionとmethodsの書き方を記載しましたが、今回はresultsの記載について。なんとなく学会発表などで指導医からつっこまれるポイントなので、身についている方もいると思いますが、復習の意味をこめて。
特に、解析に用いた患者をどのように抽出したのか、再現性を意識しながら記載する点は、日本の学会発表では無視されがちだと思うので、是非気にして欲しいところです。

2016年10月17日月曜日

抄読会を始めてみようと思います。

臨床研究センターは研究支援を行っているのですが、臨床研究を行う上ではまずは論文の評価(批判的吟味)ができる必要があります。批判的に論文をよめなければ、どんな論文が優れているかわからない → そんな状態で論文はかけないでしょうし。

ということで、以前からやってみたいと思っていた抄読会を行うことにしました。あまり負担にならず、その場にくれば何か得るものがちょっとはあるような会にしたいと思います。今回はコホート研究を抄読会に選んだのですが、今回は少しだけ気合をいれてスライドを作ってみました。


あとは抄読会というか、最近よんだ面白い論文をシェアできる場にできればいいなと思っています。



2016年9月24日土曜日

尼崎システマティックレビューワークショップ

県立尼崎医療センターで行われた診断研究のシステマティックレビューワークショップに参加してきました。

臨床研究を行うときにとても大事なこととして先行研究のレビューを行うことがあります。臨床現場で学会発表する時や、観察研究を行う際に軽視されがちですが、ここをきっちりと仕上げておかないと今までの研究と同じ研究をしてしまい、研究によって新しい知見もえられず何のために研究したかわからなくなることがあります(論文だと採択されなくなります)。どこかの国かは忘れましたが、研究助成金を申請する前には先行研究のシステマティックレビューを要するところもあるそうです。

県立尼崎医療センターはシステマティックレビューのワークショップを院内で開催し、またそのワークショップをパッケージ化して他施設に展開してます。今回はその関連で、診断研究のシステマティックレビューワークショップでした。

参加者はある程度 システマティックレビューについて知っている方が対象だったので、講義内容なども比較的高度な内容でした。特に文献検索の仕方ははじめての方には非常に難しかったかもしれません。ただ少しPubMedなどの検索に少しずつ詳しくなり、より深く学ぶ方にはとてもた目になりそうな講義でした。



今回は自分も診断研究のGRADEについて解説。システマティックレビューやガイドラインを作る際の標準的な手法としてGRADEがあるのですが、今回のワークショップにあたって勉強した範囲では、GRADEは介入研究についてはかなり方法論が吟味されているものの、診断研究においてはまだまだ未開拓のところが多いなという印象でした。




2016年5月31日火曜日

観察研究のReporting guideline STROBEの解説

若手が学会発表する際、まず最初にするのは症例報告ですが、週間医学界新聞で始まった「臨床医ならCase reportを書きなさい」の連載は興味深いです。書きなさいと言われると、ほとんどケースレポート書いたことないので耳が痛いですが(マイナー外科だと診断がついてから診療することも多いので、あまりCase reportを書く機会は少ないし・・・言い訳ですけど)

http://www.igaku-shoin.co.jp/paperDetail.do?id=PA03170_04

症例報告を書く際には「○○で効果のあった一例」とかは避けたいですね。
そういう発表をみると○○しなくても治ったんじゃない、効果あったんじゃない?という疑問符が頭に生じてしまうので。できれば副作用報告とか、一例報告でも価値あるものを発表したいとこです。

少し古いし絶版だった気がしますが、この本は誰かに薦めてもらいました。
EBM時代の症例報告 単行本 2002/1
Milos Jenicek (), 西 信雄 (翻訳), 川村 (翻訳)


https://www.amazon.co.jp/dp/4260138855


症例報告の次によくやるのは観察研究ですね。特に後ろ向きの観察研究は多くの方が経験すると思います。今回は観察研究の研究を行う際、特に論文を書く際に参考となるReporting guidelineのSTROBEの解説を行いました。




2016年5月1日日曜日

費用対効果 QALYとかの話

新しく開発される医薬品が、昔に比べて徐々に高額になっており、医薬品による医療費の高騰が問題になっています。その他にも医療機器についても、新しい機械は高額です。

医療も徐々に改善が進んで、人間が何歳生きれるかの限界近くまでいきることができつつあります。もちろん人間の身体の大半をサイボーグ化して生きるとか、現時点でSFのことが現実になって大きく変わる可能性はありますが、人間の寿命(平均寿命など)は80~100歳ぐらいが限界そうです。
新しい医療によって80歳が81歳になるかもなど、ちょびっと改善する可能性はありますが、その効果をえるために、かなり高額のお金をつぎ込むのが妥当なのかどうかが問題になります。医療費の大半は税金になりますし、医療にお金を使うかわりに、医療以外の例えば社会インフラにお金使うというのも選択肢になりうるわけです。

限りある医療費をどう適切に使ったらいいか、その判断をするために費用対効果を考えて、費用対効果のよいところにお金を使用という発想があります。

費用対効果、費用便益分析などいろいろなキーワードがありますが、
多くはPMDAとか製薬メーカーの話題サイトが多いですが、これから医療者自身も自分達の医療がどのくらい患者さん、地域にとって価値を提供できるのか考える必要があるかもしれません。

ということで、院内有志で費用対効果の勉強会を開催しました。その時のまとめです。最近では費用対効果についての論文もメジャー雑誌にでてくるようになり、今後はそういう論文を読む会を院内で開催できればと思ってます。

2016年3月29日火曜日

適応外使用について

基本的に日常診療は保険適応の中で行うことがほとんどですが、時に保険適応のない薬を使う、いわゆる適応外使用が時々問題になります。

適応外使用の薬を使う場合には、保険診療と一緒に行うと混合医療になり、保険請求できないという問題が生じます。そのため、保険適応外の薬を使う場合は、通常であれば保険請求する医療費についても本人全額負担にする、または保険適応外の薬は病院負担で行い患者に請求しないといった対応をしていることが多いようです。

適応外処方は自分とは遠い話かなと医者になってしばらく思っていましたが、意外と身近だなと最近気づきました。例えば・・・

・耳処置に使用する院内製剤のブロー氏液
・皮膚浸潤腫瘍の処置のメトロニダゾール軟膏(これは市販化されました)
耳鼻科だと結構 耳処置の薬は適応外使用とか未承認だったりしますね。



そのほかにも、保険適応ではないのだけど、公に効果が認められていて、保険請求できるような場合もあるようで(いわゆる「55年通知」)。 例えば・・・

・尿管結石に対するロキソニン
 あのひどい痛みに救急外来などでなんとなく使用していましたが、保険適応はないのですね。
 ただ、「55年通知」に基づき、保険審査上認められた処方になります。

・心停止時のアドレナリン
 これも当たり前のように1mg静注していましたが、これも厳密にいうと保険適応ではなく。
 ただ、これも「55年通知」に基づき、保険審査上認められた薬の使用になります。



意外と、保険適応外使用の際の例外事項って知らないものだなと思い、院内資料用に少しまとめました。違ってたらコメント頂けると助かります。




2016年2月28日日曜日

英文執筆のステップアップ by ブルーへルマンス先生


2月26日~27日に人材開発センターが中心になって東京医科大学、医学教育学分野のブルーヘルマンス先生をおよびして論文執筆のステップアップレクチャーを開催しました。

東京医科大学 医学教育分野
Raoul BREUGELMANS

ブルーヘルマンス先生は雑誌の編集顧問や英文校閲などをされていて、国際外科学会日本支部総会などでもランチョンセミナーを行われています。26日は論文執筆の際によくある質問についての解説などのレクチャー、27日はよくある英語の間違いを実際に修正する形でレクチャーを行いました。

詳しい内容は国際外科学会日本支部総会のランチョンセミナーでのスライド等に譲りますが、受験英語を習うことはあっても、英語論文の書き方を習う機会はほとんどないため、大変勉強になりました。院内Closedですが、来年も開催されると思います。


そのほか、レクチャーで個人的に一番気になったのは下記です。


日本語で投稿した論文を英文雑誌に投稿できるか?

これは無理だと思ったのですが、いくつかの条件をみたせば投稿できるというのも非常に勉強になりました。

基礎研究などであれば英語で発表した方がよいと考えていましたが、例えばある病気に関する臨床研究や症例報告を発表するとします。
その病気が日本で多い病気であれば、その臨床研究・症例報告を読んでほしいターゲットオーディエンスは日本人になるため、論文を日本語で書きたくなります。
もちろん日本で多い病気とはいえ、海外の人がまったく興味がないわけではないですし、日本で患者数が多ければ日本の研究がその領域の先進的な領域になりますし、必然、英文雑誌にも通りやすくなります。(英文雑誌ならImpact factorもつきますし)

*架空の話です。

そういう時に日本語と英語の雑誌、両方に載せられればよいですよね。
日本語で投稿した論文を英文雑誌に投稿する条件についても、ICMJE(国際医学雑誌編集委員会)がAcceptable secondary publicationのセクションで規定しています。


個人的に意外だったのは4番です。時々、日本語で発表したのとちょっと違う内容にしたら英文雑誌に投稿してもいいんじゃないか、みたいな話を聞いていましたが、二重に発表する時には、完全に内容が一致することが大事なようです。